AgroBox No.3(フルデータ測定用結晶準備)
AgroBox No.2の結果に基づき、測定に必要なクライオ条件の検討と結晶の凍結保存を行います。
※AgroBox No.3~6を合わせてご購入することをお勧めします。
測定用結晶の凍結
1. 結晶化&結晶観察
AgroBox No.2 (二次結晶化スクリーニングおよび結晶品質チェック)の結果に基づいて、本番のフルデータ測定用の結晶を複数個作成します。AgroBox No.2の結晶品質チェックで良い回折像が得られた溶液条件について、最大4条件まで、96ドロップ(合計1プレート分)の結晶化作業および観察を行います。
本サービスでは、5 mg/ml以上の濃度のタンパク質溶液が50μl必要になります(0.50μl分注)。タンパク質サンプル量の削減をご希望の方は、ウェル数を削減して結晶を仕込むことも可能です。
2. 結晶凍結(クライオ条件検討含む)
結晶構造解析に用いる放射光は高いエネルギーを持っているため、放射線損傷が問題となります。放射線損傷を受けると結晶中の分子の並びが乱され、回折測定が出来なくなります(常温で測定することもありますが、その場合1つの結晶からデータを取れるのは10°程度)。
放射線損傷を防ぐため、測定の際には結晶は極低温(100 K)の窒素ガス気流中で凍結されます。凍結の際に水が結晶性の氷に成長するとノイズの原因になるだけではなく、タンパク質結晶の破壊にも繋がります。そのため、抗凍結剤を加えてアモルファス状の氷になる条件で結晶を回収します。抗凍結剤となるのは有機溶媒や高分子(グリセロール、エチレングリコール、2-Methyl-2,4-pentanediol、Polyethylene Glycol)、糖類(トレハロース、スクロース)などがよく使われます。
生じた結晶から形状の良い32個を選び、測定用ループを用いた結晶の回収と液体窒素凍結を行います。この時、結晶化溶液の組成によっては、氷が生じて測定のノイズとなってしまいます。そのため、結晶を抗凍結剤(クライオプロテクタント)に浸します。抗凍結剤には結晶との相性があり、相性が悪いと結晶が壊れることがあるため、結晶化溶媒条件に基づき、3種類(グリセロール、エチレングリコール、PEG400等)のクライオプロテクタントを調製して、結晶の凍結条件の検討を行います。その後、32個までの単結晶を液体窒素により瞬間凍結し、測定日までUni-Puck (Mitogens社製)に入れた状態で液体窒素保存します。
これら作業する際は、結晶回収用Pinの先に取り付けられている極小のナイロンループ(輪っか)に溶液中の結晶をひっかける作業(フィッシング)をする必要があります。この作業は顕微鏡下で行う必要があり、熟練の技術が必要です(初心者が行うと霜がつくなどして、測定データが悪化します)。当社には、結晶構造解析10年以上の経験者が多数在籍しております。安心してお任せください。
結晶サンプリング
タンパク質の結晶化は、専用プレートにタンパク質と沈殿剤を混合した溶液を仕込み、20℃などの定温環境で数日~数週間インキュベートを行います。インキュベート中は、数日おきに顕微鏡を用いて結晶発生の有無を観察します。十分な大きさの結晶が生じたら、ループがついたピンで結晶を拾い(フィッシング作業)、液体窒素にて凍結および保存を行います。結晶は、必要以上に長時間インキュベートすると劣化を招くため、当社研究者の判断で適切な時期にサンプリングいたします。この一連の作業は、熟練の技術が必要であり、作業者の経験によって測定結果が変わってきます。例えば、タンパク質結晶は、一つのドロップに一つ生成するとは限らず、形も様々です。結晶同士が張り合わさる、沈殿の中に生じるなど、回収することが困難なものも頻繁にあります。良質な結晶への物理的なダメージを最小限にしつつ、X線回折測定時に重要な結晶マウント(結晶の向き・数)を考慮して回収する必要もあります。凍結作業については、結晶サイズに合わせて適切なサイズのループを用いて顕微鏡下で結晶化溶液から抗凍結剤溶液に置換した後、液体窒素に漬けて瞬間凍結します。凍結した結晶は、サンプルピン保管容器(Uni-Puck)を用いて保存します。Uni-Puckは、世界中の放射光施設の結晶マウントシステム(測定ロボット)に対応しているため、ドライシッパーを使い液体窒素冷却したまま放射光施設へ送ります。
結晶サンプリング
AgroBox No.3 サービス内容
基本Box(96条件)【1box必要】
※結晶化条件数×クライオ条件数(3種)×同条件の結晶複数回収 = 結晶32個(Uni-Puck 2個分)まで結晶の凍結を行います。
追加Box A(96条件追加)【0.5box必要】
基本Boxと同様のサービス内容で、結晶16個(Uni-Puck 1個分)の追加準備が可能です。
ご用意いただくもの:
・タンパク質溶液(5 mg/ml以上推奨)各Box 50 μL 必要
納品物:
・結晶観察結果のレポート
サンプリングおよび凍結を行った結晶化ドロップの写真データ